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特集 SPECIAL FEATURE

コロナ禍を経てさらに進化を遂げる

オンライン
コミュニケーションツール
「Zoom」の機能と役割

コロナ禍以降、急速に普及したオンラインコミュニケーションツール。 中でも世界的に高いシェアを誇るのが「Zoom」です。その日本法人、ZVC JAPAN(株)の島方 敏氏に オンラインコミュニケーションの多様な可能性について紹介していただきました。

オンライン<br>コミュニケーションツール<br>「Zoom」の機能と役割

島方 敏 氏

ZVC JAPAN株式会社
公共・文教営業部 部長

島方 敏 氏

2018年にZVC JAPAN㈱(Zoom Video Communications, Inc.の日本法人)へ入社。公共・文教営業部部長として、国内の公共、文教領域の顧客の支援、ならびにローカルチームを育成しながら、部門の売上、収益を増やすことに取り組む。入社以前は外資系通信社で営業として従事。2000年代初頭、黎明期のWeb会議に利用者として触れた際、サービスの将来性を感じ、2005年にWebEx(現・Cisco Webex)へ入社。以後、Web会議を中心とした複数の外資系のクラウドサービス営業に携わってきた実績を持つ。


Zoomを生み出した創業者の思い

 当社は2011年に創業者兼CEOのエリック・ヤンが「すべての人に幸せを届ける」というビジョンの下に創業した会社です。エリックには大学時代に遠距離恋愛中の恋人がいて、その時に「もっと気軽に遠方の人と顔を見て話せるようになれば、世の中はもっとハッピーになるはずだ」と考え、Zoomのコンセプトの着想を得たそうです。エリックはその後、遠距離恋愛中の女性とめでたく結婚しましたが、その後もZoomにかける情熱は増し、今は「2035年までに、相手の飲んでいるコーヒーの香りが伝わり、ハグできるようなオンラインコミュニケーション体験を実現させる」というテーマを掲げています。

 Zoomの普及とともに、ZVCの規模は拡大し続けています。2019年には米国のNASDAQに上場し、Zoomは米国や日本を含む47カ国で提供されるまでになりました。今や米国のフォーチュン100(米国のビジネス誌『フォーチュン』が選ぶ急成長企業100社)の約9割がZoomを導入している他、金融機関や医療機関、教育機関などでも圧倒的なシェアを誇っています。

コロナ禍以降は日本でもシェアが急拡大

 日本ではこの数年でオンラインコミュニケーションツールが普及し始めました。実際、コロナ禍の前までZoomは日本国内でほとんど知られていませんでしたが、コロナ禍におけるリモートワークの推進などと相まって、一気に広まっていきました。

 また、経済産業省が実施していた「学びを止めない未来の教室」(新型コロナウイルス感染症対策で、全国の学校の臨時休業が進む中でも、EdTech〈エドテック〉※を活用して学びを止めないためのプロジェクト)でZoomが活用されたことも、大きな追い風になりました。これを機に教育現場からの引き合いが一気に増えていったのです。

※EdTech(エドテック)……Education(教育)とTechnology(技術)を組み合わせた造語で、教育現場にITを取り入れ、イノベーションを起こす動きやサービスのことを意味する。

 もっとも、これだけ急拡大した背景にはフリーミアム(基本サービスを無料で提供すること)というビジネスモデルがあるのも事実です。Zoomは「すべての人に幸せを届ける」というビジョンの下、無料でアカウントを作成できる仕組みになっており、無料アカウントでも40分はMeetings(オンラインミーティング)機能を使用できます。実際、ちょっとした打ち合わせや会議は40分以内に終わるでしょうから、多くの人にとっては無料プランでも十分に活用いただくことができるはずです。ただ、それ以上に多くの人たちがもっと長く、より多くの人たちとオンラインコミュニケーションを取りたいと考えてくださり、その結果として有料ユーザーが順調に増加しているのです。もちろん、こうした状況は世界的に共通しており、特にコロナ禍以降は多くの国・地域で急速にZoomが普及しています。2019年12月は全世界のZoom利用者が1日平均1000万人でしたが、コロナ禍後の2020年3月時点ではその数が1日平均3億人に達し、それ以降も着実に増加している状況です。


 ただ、当時は爆発的な普及にうれしさを感じる半面、幾分か不安を感じることもありました。コロナ禍の初期、当社(日本法人)はまだ30人ほどの従業員規模で、問い合わせなどの急増に十分に対応できる状態ではなかったからです。また、運用面やセキュリティー面でもいくつかの問題が生じ、2020年4~5月頃にはちまたで「知らない人がZoom Meetingsに参加してきた」といった事案が発生し、報じられることもありました。

 そこで、当社では問題が発生したらすぐに公表して1日~1週間以内に改善策を講じるとともに、急ピッチで人員とインフラの増強を実施。エリック自身も「90日セキュリティープラン」という方針を発表し、その他の開発を止めて、セキュリティーの向上に全精力を注ぎました。結果、ソフトウエアの改善はもちろん、日本ではもともと東京都の1カ所しかなかったデータセンターを千葉県や大阪府にも開設するなどして、従来よりもスムーズかつ安全・安心に利用いただける環境を整えていきました。おかげで、今や日本での信頼度も増し、公的機関などでも積極的に導入いただけるようになりました。



プラットフォームとしての多様な可能性

 Zoomは今、単なるツールとしての枠を越え、コミュニケーションプラットフォームを目指したブランディングを展開中です。オフィスやワークスペースにおける出退勤・入退室の管理機能、電話機能などを活用いただくことで、デバイスの垣根を越え、リアルとオンラインのコミュニケーションをよりスムーズなものにしていただければと考えています。


 その中核となる機能の一つが「Zoom Phone」です。これはクラウドで提供される通話サービスで、携帯電話のキャリアに依存することなく、電話をかけられるという特徴を持っています。また、固定電話で使用されている10桁の地域固定電話番号を利用することができ、そこにかかってきた電話を固定電話だけでなく、スマートフォンやパソコンで受け取ることができます。この機能は少数精鋭の事務所を経営されている先生方にとって、特に使い勝手が良いものではないでしょうか。プライベートの携帯番号やLINEのアカウントを顧問先に教えて、いつ何時でも対応するというスタンスの先生方もいらっしゃると思いますが、中には就業時間以外の対応は控えたいと思っている方もいらっしゃるはず。その点、Zoom Phoneであれば着信可能な時間を設定し、それ以外の時間帯は留守電機能をオンにすることができるので、オンオフの切り替えを無理なく行うことができます。その他、Zoom Phoneであれば、会話をしていてふと「相手に資料を見せたほうが分かりやすい」と感じた時に、ボタン一つでシームレスにZoom Meetingsに切り替え、その場で資料を表示するといったことも可能です。

 また、あまり知られていない機能の一つに「Zoom Team Chat」があります。これは「Chatwork」や「Slack」といったチャットツールと同じように、個人間やグループ間でのチャットを通じ、コミュニケーションの円滑化を図るというものです。Zoomのアカウントを持っている人とであれば誰とでもやりとりをすることができるので、顧問先がZoomを使用している場合は、私的利用が多いLINEからZoom Team Chatに切り替えることで、ビジネスとプライベートを切り分けることができると思います。なお、ZVCの社員は皆、Zoom Team Chatのみで社内外とのやりとりを完結させているので、メールをほとんど使用していません。

 さらに、グローバルビジネスに対応する機能として、翻訳キャプション機能というものもあります。これは相手が英語などで発言した内容を同時に日本語字幕で表示してくれるという優れものです。この機能をうまく使えば、誰かに通訳を依頼することなく、気軽に海外のビジネスパーソンとコミュニケーションを取ることができるようになります。

中山間・離島地域の子どもたちにも、都市部と
同じ品質の教育を届けるため、有名講師の
オンライン出張授業を実施

 他方、当社ではこれらの機能でDXを推進することを目的として、13の自治体と包括連携協定を締結しています。具体的な用途は防災や医療、教育、産業振興など多岐にわたります。例えば大分県では農地の視察を遠隔で行う実証などにZoomを活用しました。ドローンで農地を撮影し、その様子をZoomの画面共有機能を活用してリアルタイムで見てもらったのです。すると、利用者からは「現地に赴くよりも俯瞰的かつ客観的に視察することができた」「その場でZoomにしてほしいなどの要望にも対応してもらえて良かった」などの声が寄せられました。

 また、同じく大分県では文部科学省の「COREハイスクール・ネットワーク構想事業」(教育課程の共通化やICT機器の活用により、中山間地域や離島などにおいても多様な進路実現を可能にするための事業)においてZoomを活用いただき、過疎地での遠隔授業などを実施。配信コンテンツと異なり、先生も生徒も相手の反応をリアルに感じられる点などが高く評価されました。

 今後の方針としては、AIを積極的に取り入れることで、さらにZoomの機能を拡張していきたいと考えています。そのテーマの一つに議事録の自動作成機能があります。既に文字起こし機能はZoomをはじめ、その他のオンラインコミュニケーションツールでも搭載されていますが、会議の内容をAIが自動的に要約し、議事録を作成する機能はまだほとんどないので、差別化を図るポイントになると思います。また、それ以外にもオンラインで商談などをした時にAIがその内容を評価・判定する機能も盛り込む予定です。この機能を活用すれば、営業活動を効率的に進められるようになるだけでなく、社員のスキルアップにも役立てられると思います。

 こうした機能を拡充していくことで、オンラインコミュニケーションツールの枠を越え、人のクリエイティブな活動を促し、より多くの人たちが幸せになれる社会を実現していきたいと考えています。

 ぜひ会計事務所の皆さまにおかれましても、機能をご活用いただくことで、業務の生産性向上に役立てていただければと思います。

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