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シリーズ企画

2021年05月号

コロナ禍におけるM&Aの現状と
円滑な事業承継に向けて

コロナ禍によって、M&Aに関する動きが一部で加速、とりわけ事業承継型のM&Aに注目が集まっています。 では現状、M&Aは実際にどのような業種で増加し、成約しているのでしょうか。 また、コロナ禍だからこそ注意すべきポイントなどはあるのでしょうか。 MJSのグループ会社で事業承継の支援を手掛けるMJS M&Aパートナーズ(mmap)が最新の動向を紹介します。

新型コロナ関連の経営破綻の現状

 2021年1月18日17時時点で、昨年2月からの「新型コロナ」関連の経営破綻の累計は全国で884件(倒産812件、弁護士一任・準備中72件)となりました。

 月別では、103件発生した20年6月以来、7月は80件、8月は67件と前月を下回りましたが、9月は100件で3カ月ぶりに前月を上回り、以降11月まで3カ月連続で100件を上回りました。12月は三桁を下回りましたが、96件と依然として高止まりで推移。21年1月も18日時点で41件が判明し、100件ペースが続いています。

2020年休廃業・解散の動向

 昨年に全国で休業や廃業、解散を行った企業(個人事業主を含む)は 5 万 6103 件(前年比5・3%減)、休廃業・解散率は3・83%にとどまり、16 年以降で最も低くなりました。

 新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言の発出で当初は廃業などの淘汰が加速度的に進むと考えられました。しかし、持続化給付金事業など政府による経済対策、特例融資や弁済リスケジュールの柔軟な運用など、金融機関による手厚い支援が中小企業の経営を強力に下支えしたことで、事業を自主的に畳む企業の休廃業・解散は、例年に比べてその発生が大きく抑制されたようです。

 ただ、休廃業・解散した企業の業績をみると 20 年は全体の 57・1%で当期純利益が黒字でした。前年を1・7ポイント上回った他、これまで最も高かった 18 年(56・0%)をも上回って推移しており、黒字での休廃業・解散の割合が過去最高を更新しました。

 新型コロナにより先行きが見えないなか、赤字などで経営体力に乏しい企業ではなく、財務内容やキャッシュに余裕のある企業から自主的な廃業や解散を選択している可能性があります。

写真1
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新型コロナのM&A市場への影響

 当社でも、買収ニーズの相談件数は2020年4月の緊急事態宣言発出に伴い、前年同月比で半減しました。しかし、5月以降は相談件数が回復し始め、累計で前年度より増加する結果となりました(図1)。

 買収ニーズを業種別で見ると、製造業とサービス業、医療関連は減少しました(図2)。買い手企業の経営がコロナの影響を受けたり、本業が忙しくM&Aを検討する余裕がなかったと考えられます。

 一方、投資を目的とする不動産業の需要が倍以上に増加しました。業種不問という、今後の事業発展を準備するための買収ニーズも増加しています。また、コロナ禍の長期化により、テレワークやデリバリーで需要が見込まれる情報技術、運送業にも関心が高まっているようです。

mmap買収ニーズ相談件数の推移

QRコード

 新型コロナの影響はM&A市場に対しても大きな影響を及ぼしており、M&A交渉の長期化や見直しが続いています。しかしそのような状況でも、買い手企業の約7割がM&Aに前向きな姿勢を示していることが、専門会社の調査で分かりました。

 コロナ禍の中で最も影響を受けた卸小売業と宿泊飲食業の買収ニーズは、昨年より増加しました。一定の規模があって財務基盤が強い企業はコロナ禍でもM&Aによるスケールメリット獲得や事業拡大を積極的に検討していると分析できます。

出典:東京商工リサーチ 「新型コロナウイルス」関連破たん

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