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事務所 訪問

2021年05月号

森会計事務所 写真

顧問先の日常的な変化を敏感に察知し
コミュニケーション重視の支援に尽力

三重県四日市市の森会計事務所は製造業や建設業、医業の顧問先を多数抱え、地域密着、 コミュニケーション重視の顧問先サポートを展開しています。早速、日本公認会計士協会東海会三重県会県会長も兼任されている 所長の森 智先生に、これまでの歩みと現在の取り組みについて伺いました。

経営者に寄り添いながら経営者と共に経営課題に向き合う

森先生は2代目だそうですが、森会計事務所で働き始める前は愛知県名古屋市の監査法人で働いていたそうですね。

森 智所長(以下、敬称略) 公認会計士試験(2次試験)に合格した後、私は父の友人が所長を務めていた名古屋の監査法人に入所しました。その監査法人は地域では名の知れた老舗で、トヨタ自動車グループをはじめ、数多くの有力企業と監査契約を結んでいました。おかげで、私もそういった有力企業の会計監査などに携わることで、公認会計士としてのスキルを磨くことができました。

その後、どういった経緯を経て森会計事務所で働き始めることになったのですか。

 もともと5年で地元の三重県四日市市に戻り、父の事務所で働くつもりだったので、予定通り1991年から森会計事務所で働き始めました。最初の10年はバブル経済が崩壊した余波が大きく、経営者から資金繰りなどの相談を受けたり、膝詰めで議論したりすることもしばしばで、大いに鍛えられました。

監査法人とは異なる仕事も多かったかと思いますが、ギャップを感じることはありましたか。

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OJTを重視し、顧問先支援に努めています

 確かに監査法人時代とは担当する企業の規模も違いますし、会計監査と税務会計の業務も全く異なるものでしたが、結果的には今の職場のほうが私には向いているように感じています。税務会計業務には経営者と一緒になって数字に向き合いながら決算書を作成し、分析し、改善するというサイクルがあり、そのあたりに醍醐味を感じることができたのです。事業規模に違いはありましたが、経営者と直接会って対話ができるのも私にとっては大きなモチベーションになりました。中小企業の経営者は個性的で、お会いするたびにさまざまな刺激を受けることができますしね。ただ、その一方で経営者の人となりや性格をきちんと見極めることの重要性も身に染みて感じるようにもなりました。税務会計業務は経営者から正確な情報を得なければ前に進めることはできません。だからこそ、しっかりと経営者の懐に入り込む必要があるのです。例えば質問の仕方一つとっても、経営者のタイプに寄り添うことが重要で、単刀直入に話したほうがいいのか、少し婉曲的に話したほうがいいのか、冗談交じりで話したほうがいいのか、といったことを経営者に合わせて切り替えるようにしています。

父上との代替わりはいつ行ったのですか。

 徐々に裁量などを譲り受けながら、最終的には2015年、父が79歳のときに私が所長になりました。父からは一つひとつの仕事を正確に着実に手掛けていく姿勢を学んだように思います。

徹底した職員教育を通じてハイレベルなサポートを維持

経営理念としてはどのようなものを掲げていますか。

 明確な経営理念などは設けていませんが、必要以上に規模拡大をしない、自分の目が届く範囲で丁寧な仕事をするといったことを心掛けています。

公認会計士としてのキャリアが生かされることもあるのでしょうか。

 地域の金融機関から大企業の連結子会社への関与を頼まれることがあります。会計監査を引き受けるわけではありませんが、税務申告のお手伝いをしながら、一方で最新の会計基準に対応するため、担当者の相談相手になるような業務を行なっています。また、大学の会計監査などを共同で引き受けたりもしていますね。なお、私は今、日本公認会計士協会東海会三重県会県会長を務めさせていただいています。協会の仕事が大変なこともありますが、職務を通して引き続き業界や地域に貢献し続けたいと思います。

昨今はどのような相談が増えていますか。

 コロナ禍関連の補助金や助成金、資金繰りの相談の他、最近は事業承継に関する相談が増えています。親族内承継だけでなく、従業員への承継などもしばしばあり、その都度、株式をどのように譲渡していくのか、経営者保証をどうするのかといったことを膝詰めで議論し、事業承継の計画を立てています。また、事業承継にはどうしても時間が掛かるので、経営者が高齢の場合はそれとなく経営者の意向を聞いたりしながら促すようにしています。

 その一方で、経営者や医師などから相続に関する相談を受けることも増えてきました。特に自発的に贈与を進めている場合は要注意なので、税務上問題がないかどうかを念入りにチェックさせていただき、適切な対策をアドバイスするようにしています。

職員教育については、どのようなことに気を付けていますか。

 当事務所は担当制で、職員一人ひとりが複数の顧問先を担当しています。ですから、職員たちには電話やメールでのやりとりの際に、ちょっとでも変わったことがあれば、すぐに共有してもらうようにしています。もちろん、決算準備などで直接お会いする際にはしっかりとお話を伺うようにしていますが、それと同時に日常のちょっとした変化を敏感に感じ取り、漠然とした不安や悩みにアプローチしていくことが肝要なのです。もちろん、その際にはデリケートなコミュニケーションが求められるので、電話での話し方やメールの文面などは適宜、アドバイスしています。

 また、当事務所ではOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング:実務を通した職場内教育)を重視しており、入所3カ月くらいで顧問先を担当してもらったり、1年目から申告書の作成に携わってもらったりしています。また、給与計算や社会保険などの知識についても、先輩職員の指導の下、実務を通して一気に覚えてもらっています。ちなみに現在、当事務所では7人の女性職員が働いてくれていますが、その多くは、地元の商業高校からの新卒採用です。その商業高校とは父の代からのお付き合いがあるのですが、卒業生の皆さんはとても優秀で、即戦力として活躍してくれています。

コロナ禍に対応しつつ自動車産業の変化にも対応

地域におけるコロナ禍の影響はどうでしょうか。

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丁寧に顧問先とコミュニケーションを図り、
さまざまな角度から支援をされている森 智先生

 飲食業をはじめとしたサービス業はかなり厳しい状況です。また、出掛ける機会が激減したことから、衣料品などの売上げも大幅に下がっているようです。他方、製造業に関してはそこまで大きな影響はありませんが、電気自動車へのシフトが業界全体にこれまでにない大きな変化をもたらすと考えられます。電気自動車が普及すれば、エンジン周りの部品が不要になる可能性はもちろん、既存の自動車メーカー以外の企業の参入など、自動車産業関連の製造業にとっては大打撃です。当然ながら早めの対応、変革が必要になるので、このあたりについても顧問先からは念入りにヒアリングしているところです。そして、新たなビジネスに挑戦するということであれば、経営者と共に事業計画を練り上げ、資金繰りなどのシミュレーションを全力でサポートしていきたいと考えています。

最後に今後の展望についてお聞かせください。

 基本的な方針については現状を維持していくつもりです。ただ、インボイス制度の導入などに合わせて請求業務などのペーパーレスが一段と進むでしょうから、MJSの皆さんにもご協力いただきながら、実務に関してはよりデジタル化を推進していきたいと思います。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。

税理士・会計士までのあゆみ

 森会計事務所は森先生の父上が1970年に開業、当時、森先生は小学2年生だったそうです。「一人っ子だったので、子どもの頃から漠然と事務所を継ぐことになるのかなと思っていましたし、高校生くらいの時には性格的にも向いているような気がしていました」と森先生。こうして森先生は公認会計士を目指すことを決意し、大学4年生の頃から専門学校にも通い始め、87年には24歳で公認会計士の2次試験に合格。そして、父上の同級生が所長を務めていた名古屋の監査法人で5年間勤務した後、91年に森会計事務所に入所。同年に公認会計士3次試験にも合格し、晴れて公認会計士・税理士としてのキャリアを歩み始めました。

森会計事務所

所在地
三重県四日市市鵜の森1-7-8 マルトクビル2階
TEL
059-351-9153
設立
1970年
職員数
7名

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