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四国会企画①

2020年12月号

「瀬戸内しまなみ海道」を
サイクリング

広島県尾道市から愛媛県今治市にいたる約70kmの「瀬戸内しまなみ海道」といえば、世界のサイクリストたちの聖地の一つ。コロナ禍でインバウンドの受け入れはまだ望めませんが、瀬戸内海ならではの多島景観を眺めながら走れる風光明媚なサイクリングルートの魅力はもちろん健在、国内観光客は多数訪れており、飲食店や宿泊施設も賑わいを取り戻しています。そこで、このサイクリングルートの魅力とともに各所、各島に点在するオススメスポットを紹介したいと思います。

楽しみ方が多様化しているサイクリストの聖地

 「瀬戸内しまなみ海道」は1999年の開通時には日本初の〝海峡を横断するサイクリングルート〟として話題になりましたが、国際的に注目を集めたのは2012年のこと。台湾のサイクリングブームの火付け役である自転車メーカーGIANT社の劉金標会長(当時)が「まさにここはサイクリングパラダイスだ」と絶賛したのがきっかけでした。以後、台湾人旅行者が急増し、14年には米CNNの特集で「世界の最も素晴らしいサイクリングルート」の一つに選ばれ、初開催の国際サイクリング大会「サイクリングしまなみ」には7281人が参加。こうして、しまなみ海道は国内外から数多くのサイクリストが訪れる聖地となったのです。

 では、サイクリストたちはどのようなコースでしまなみ海道を楽しんでいるのでしょうか。しまなみ海道のマーケティングやプロモーション、レンタサイクル事業などに取り組む一般社団法人しまなみジャパンの山本 淳氏によれば、推奨コースは「広島県尾道側に最も近い向島のみを1周する初級と、瀬戸内海のほぼ中央に位置する生口島や大三島まで行ってフェリーで戻る中級、そして全6島を走破して四国まで渡る上級」の3つ。人気は上級コースで「『瀬戸内海を自転車で横断したい』と憧れを抱いてこの地を訪れる人が多い」そうです。その一方、「各所にある宿泊施設を拠点として、気ままに各島を巡る個人客も増えている」とのことで、開通20年以上を経てしまなみ海道サイクリングの楽しみ方は多様化しているようです。

大山祇神社。宝物館には多数の国宝・重要文化財の鎧や兜、刀剣類が収蔵さ れている

大山祇神社。宝物館には多数の国宝・重要文化財の鎧や兜、刀剣類が収蔵さ れている

瀬戸田町のレモン

瀬戸田町のレモン

因島大橋。しまなみ海道では7つの橋 が島々を繋いでいる。デザインや形態、 長さなどが異なりそれぞれ個性的なの で、サイクリングの際はぜひ注目を

因島大橋。しまなみ海道では7つの橋 が島々を繋いでいる。デザインや形態、 長さなどが異なりそれぞれ個性的なの で、サイクリングの際はぜひ注目を

2014年10月に開催されたサイクリン グイベント「瀬戸内しまなみ海道国際 サイクリング大会」の様子。広島県と 愛媛県とが協力し、しまなみ海道の高 速道路部分(今治IC~因島北IC)を通 行止めにした。写真は伯方・大島大橋

2014年10月に開催されたサイクリン グイベント「瀬戸内しまなみ海道国際 サイクリング大会」の様子。広島県と 愛媛県とが協力し、しまなみ海道の高 速道路部分(今治IC~因島北IC)を通 行止めにした。写真は伯方・大島大橋

尾道市から今治市まで魅力たっぷりの島々

一般社団法人しまなみジャパンHP(https://shimanami-cycle.or.jp/)のモデルコースをもとに作成

一般社団法人しまなみジャパンHP(https://shimanami-cycle.or.jp/)
のモデルコースをもとに作成

 というわけで、尾道市側から上級コース沿いの島々を順に紹介していきましょう。最初に訪れるのが向島。JR尾道駅前の港から南にわずか約300m幅の尾道水道を隔てた位置にあり、尾道旧市街地の対岸にあたる地域は「尾道・古寺と港町の歴史文化保存活用区域」の一部となっています。この島を走り抜け、1983年の完成当時日本一の長さ(中央支間長770m)だったという吊り橋、因島大橋を渡って因島へ。戦国時代に瀬戸内海を支配した村上海賊三家の一つ、因島村上家の本拠地があった島で、因島水軍城ではその歴史に触れることができます。続く生口島(瀬戸田町)は日本一の国産レモン産地。島北側の海岸沿いの道には、平山郁夫画伯が愛した瀬戸田水道や瀬戸田サンセットビーチ、明治時代に栽培が開始された国産レモンのふるさと「レモン谷」といったビュースポットが点在しています。レモン谷すぐ近くの多々羅大橋を渡れば、伊予国一宮である大山祇神社があることから「神の島」といわれる大三島です。同神社は戦勝祈願・勝負運・開運といった御利益があるパワースポットなので、サイクリングの途中にぜひ立ち寄ってみてほしいと思います。また、この島は近年、移住者が手掛けるカフェや飲食店、宿泊施設が増えていることでも注目されています。例えば今年3月にオープンしたばかりの「WAKKA」はコテージやドームテント、ドミトリーなど多様な形態の宿泊施設やカフェの他、eバイク※のレンタサイクルや自転車積載タクシー・ボート、レンタサイクル返却代行、出張修理、手荷物の配送からサポートカーまで手厚いサイクリングサポートを手掛ける〝しまなみ海道のサイクリング総合施設〟。運営会社である(株)わっか代表取締役の村上 あらし氏によれば、「サイクリングの途中にカフェ利用や休憩に立ち寄ってもらうのはもちろん、WAKKAまで車やオートバイでアクセスし、ここを拠点としてしまなみ海道ならではの観光ツアーやアクティビティに参加したり、船で出掛けたり、島をゆったり散策したり、バーベキューをしたりと楽しみ方は無限大。ぜひサイクリングのみならず、さまざまな形でしまなみ海道の魅力を体験してほしい」とのこと。コロナ禍の影響は甚大だったものの、緊急事態宣言解除後は順調に利用客数が伸び、8月から11月までは平日も含めてほぼ満室、カフェも大賑わいだそうなので、今後、しまなみ海道観光の新たな拠点施設として定着していくことが期待されています。

 次は海運と造船の島、また全国的に有名な「伯方の塩」発祥の地である伯方島を通って、四国の今治市側に最も近い大島へ。この島にはカレイ山(232?) や亀老山(307?)といったビュースポットがあります。アップダウンが激しい難所ではありますが、ぜひしまなみ海道らしい景観を堪能しましょう。大島から日本三大潮流の一つとして知られる来島海峡を渡れば、四国上陸です。このように、しまなみ海道の島々はそれぞれ実に個性的。単に走破するだけでなく、各島の魅力にじっくり触れるのがオススメです。

しまなみ海道を訪れたら、ぜひ瀬戸内 海の鮮魚も味わいたい。写真は四国側 に最も近い大島の喜多寿しのお造り盛 り合わせ

しまなみ海道を訪れたら、ぜひ瀬戸内 海の鮮魚も味わいたい。写真は四国側 に最も近い大島の喜多寿しのお造り盛 り合わせ

日本三大潮流の一つに数えられる来島 海峡の渦潮。その迫力ある潮流を間近 で体感できるクルーズ「来島海峡急流 観潮船」も人気

日本三大潮流の一つに数えられる来島 海峡の渦潮。その迫力ある潮流を間近 で体感できるクルーズ「来島海峡急流 観潮船」も人気

大三島に新たにオープンした

大三島に新たにオープンした"しま なみ海道のサイクリング総合施設"、 「WAKKA」でのバーベキュー

大三島の海辺に佇むオミシマコーヒー 焙煎所でほっと一息。大三島に限らず、 しまなみ海道各島にはこうした魅力的 なカフェが増えている

大三島の海辺に佇むオミシマコーヒー 焙煎所でほっと一息。大三島に限らず、 しまなみ海道各島にはこうした魅力的 なカフェが増えている

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