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東北会企画②

2021年03月号

岩手県雫石町から全国に広がった
地域活性化事業「元祖 軽トラ市」

軽トラックの荷台を店舗に見立てた朝市「軽トラ市」。このイベントの元祖が2005年に岩手県雫石町で始まった「しずくいし軽トラ市」だということをご存じでしょうか。その後、全国各地に広まり、いまでは150カ所で開催されています。このユニークなイベントが誕生した経緯や昨今の取り組みについて、しずくいし軽トラ市実行委員会事務局の岩崎 憲悦事務局長にお話しいただきました。

軽トラ産直市で商店街を活性化

 岩手県盛岡市から西16㎞にある雫石町(人口1万6115人)は、山や湖に囲まれた自然豊かな地域です。温泉やスキー場など豊富な観光資源に恵まれ、小岩井農場に代表されるように農業・酪農も盛んに行われています。しかし近年、他の地方小都市と同様、郊外型大型店の進出やインターネット販売の利用者増加の影響を受けて、町内の商店街での購買客の減少が課題となっていました。雫石の中心商店街である「よしゃれ通り」も店主の高齢化などで廃業する店が増えて、賑わいが失われつつありました。

雫石商工会の岩崎事務局長

「軽トラ市などの視察も受け入れ
ています」と話す雫石商工会の岩崎
事務局長。視察希望などの問い合わ
せは、しずくいし軽トラ市実行委員
会事務局(雫石商工会内)まで
(岩手県岩手郡雫石町中町7-4
TEL:019-692-3321)

 そこで、商店街の活性化策として発案されたのが「しずくいし軽トラ市」です。その発端となったのは2003年に雫石町が策定した中心市街地活性化基本計画で、これに基づいて商工会が「雫石町TMO構想」を策定。具体的な活性化策を議論する中で「農家のほとんどが持っている軽トラに、朝収穫した新鮮な野菜や山菜などを積んでそのまま商店街で売れば賑わいを創出できるのでは」という提案がワークショップを開催する中から上がったのです。出店者にとっては車で乗り付けてそのまま荷台を売り場にできるため搬入・撤収の負担が少なくて済み、運営者にとっても売り場の設定やスタッフの準備などにさほど手間や運営費が掛からないといった点が好評で、すぐさま商工会青年部や関係団体、行政などで「しずくいし軽トラ市実行委員会」(木村 文也委員長(当時))を組織し、具体的な運営方法などの検討が始まりました。

 そして、5月から11月までの第1日曜日(7月のみ第2日曜日)の午前9時から午後1時まで、年間7回の開催ということで決定したのですが、実施にはさまざまな問題が発生しました。例えば会場である県道の使用許可がおりない、開催日の日曜日は肝心の商店街が定休日であるといった具合にです。それでも何とかこうした問題を解決して、05年7月には晴れて第1回「軽トラ市」が開催。初回の来場者は3000人でその後も順調に推移し、初年度は全6回の開催で出店台数は272台、来場者数は1万2800人となりました。その後もさらにこのイベントは盛り上がり、毎回50台以上の軽トラが参加し、毎回4000~5000人を超える賑わいを創出することに成功。19年度は来場者数が過去最多の3万1700人になりました。

新たな賑わいづくりを目指して

 昨年はコロナ禍のため、5月、6月の開催は中止となりましたが、7月から11月までの5回で2万人もの方にご来場いただきました。回を重ねるごとに軽トラの荷台に並ぶ商品は野菜、果物、海産物、工芸品の他、温泉回数券や軽トラそのもの、薪ストーブ、温泉利用券、若者に人気のスイーツなどと多様化しており、幅広い年齢層の来場につながっています。

 「しずくいし軽トラ市」は21年で17年目を迎え、開催回数も112回を超えました。商業だけでなく農家なども含めた地域ぐるみの活性化策の先駆けとなり、年間3万人を集客する商店街のイベントとして定着しただけでなく、いまや町の観光資源となっています。こうしたユニークな試みがさらに全国各地に広がることを願っています。

軽トラの荷台をステージとして活用

軽トラの荷台をステージとして活用

コロナ禍では感染防止対策を徹底しながら開催

コロナ禍では感染防止対策を徹底しながら開催

歩行者天国になった「しずくいし軽トラ市」の様子。「雫石よしゃれ通り商店街」の店舗数は現在45軒

歩行者天国になった「しずくいし軽トラ市」の様子。「雫石よしゃれ通り商店街」の店舗数は現在45軒

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