東北会企画①
2018年07月号
夜空を彩る巨大灯籠
「天空の不夜城」
能代市は秋田県の北西に位置する人口約5万2000人のまち。西に雄大な日本海、北に世界遺産「白神山地」を望み、古くから海運業と林業で栄えてきました。2010年から巨大な灯籠を掲げる七夕祭り「天空の不夜城」を開催するなど、近年観光産業にも力を入れています。能代商工会議所の柳原 清司氏に、祭りの歴史と今後の展望について伺いました。
1000年以上の歴史を誇る「能代役七夕」をより魅力的に
能代市では、毎年8月6~7日に「能代役七夕」という伝統行事が行われています。大きな灯籠が街中を練り歩くのが特徴で、その歴史は1000年以上。一説によると、飛鳥時代の将軍・安倍比羅夫が蝦夷遠征の際に、大きな灯籠をつくって敵を威嚇したことがはじまりと言われています。
中でも、ひときわ目を引くのが城郭型の灯籠ですが、この形は天保時代(1830~1844年)に名古屋城を模した灯籠がつくられたことを起源とします。その後、大型化が進み、「高さ五丈八尺(17・6m)幅三間四方(5・4m)もある城郭型灯籠を夜明けまで引廻した」という明治時代の記録も残されています。
しかし、明治後期以降、灯籠の高さは7~8m程度に制限されます。電気が普及し、街中に電線が張り巡らされるようになったためです。
それから時が流れ、2012年、市のメインストリートである能代市国道101号の電線地中化が完了したことを機に、かつての巨大灯籠を復活させようという声が上がりました。近年、能代市も多くの地方都市と同様に、少子高齢化による人口減少に悩まされています。まちの活力を少しでも取り戻したいという思いから、先人たちが守り、残してくれた伝統の祭りをパワーアップさせ、観光の目玉にしようという取り組みが始まったのです。そして行政や商工会議所、自治会や企業などが協力して、「天空の不夜城協議会」を立ち上げました。
高さ17・6mの巨大灯籠を1枚の写真から再現
しかし、いざ巨大灯籠を復活させるとなると、苦難の連続でした。まず、作り方が分からない。能代は昭和に2度の大火に見舞われており、巨大灯籠の詳細な資料が全て焼失してしまっていたのです。幸いにも、巨大灯籠を写した明治時代の銀板写真が1枚発見され、その写真をもとに灯籠を設計することができました。制作工程については「立佞武多」で知られる青森県五所川原市の関係者にアドバイスをもらいました。また予算が限られていたため、実際の制作にあたっては、ボランティアを募集。延べ2000人ほどが参加して13年に高さ17・6mの巨大灯籠「嘉六」が完成し、その年の夏に第1回「天空の不夜城」を開催、1世紀の時を超えて巨大灯籠を復活させることができました。
「嘉六」が制作された翌14年には高さ24・1mの城郭型灯籠「愛季」を制作。以来、毎年8月3~4日に2基の巨大灯籠、能代若、能代小若の灯篭が能代の夜を彩り、今では二日間で20万人もの観光客を楽しませています。
現在、巨大灯籠を通年観光に役立てることを計画中です。組み上げた状態のままで展示できる超巨大保管庫を作り、観光スポットとして運営していこうというわけです。また、青森市の「ねぶた」、秋田市の「竿灯」、盛岡市の「さんさ踊り」など、東北の祭りをめぐるツアーも実施して、より多くの観光客を呼び込みたいです。「能代役七夕」「こども七夕」と「天空の不夜城」の開催期間中に、「観光客100万人」が目標です。