CHANNEL WEB

近畿会企画

2018年09月号

宇治の名店

平等院鳳凰堂で知られる京都府宇治市といえば、 宇治茶の産地としても有名です。 そこで、今回は宇治市の魅力と共に、宇治茶の老舗である 「通圓」を紹介したいと思います。

由緒正しい全国屈指のブランド

飛鳥時代に日本で初めての橋(宇治橋)が架けられ、平安時代には『源氏物語』の舞台になった他、藤原頼通によって平等院鳳凰堂が建立されるなどしてきた宇治市。茶の栽培は鎌倉時代から始まったとされていますが、室町時代になると足利義満が宇治茶の栽培を奨励し、幕府の御用茶園である「宇治七名園」を開くなどしたことから全国屈指のブランドになりました。また、宇治は茶葉のさまざまな加工技術の発祥の地としても知られています。例えば1738年には、宇治製法※1が開発され、現在の日本茶の主流である煎茶が誕生しました。他にも、高級煎茶の代表格である「玉露」の栽培手法※2を生み出し、完成させたのも宇治の茶師たちだそうです。

今回は奥深い宇治の魅力の中から宇治茶に注目し、宇治橋のたもとに本店を構える宇治茶の老舗「通圓」の歩みと取り組みを紹介したいと思います。

ブレンドした宇治茶に自信

通圓が創業したのは平安時代末の永暦元年(西暦1160年)のこと。元祖は古川右内という武士であり、源頼政の家臣でした。そして古川右内は晩年、頼政の「政」を賜り、太敬庵通円政久と名乗って宇治橋の東詰に庵を結びました。以来、その子孫は代々「通円」の姓を名乗って宇治橋の橋守(守護職)を務め、宇治で茶の栽培が盛んになってからは道行く人たちに茶を出し、次第に茶屋としてその名を馳せるようになったそうです。

それにしても、なぜ宇治茶は日本屈指のブランド力を持つようになったのでしょうか。通圓24代目の通円 祐介氏によると、「宇治川がもたらす肥沃な土壌と物流の利便性、そして早朝に朝霧が立ち込める穏やかな気候が相まった結果だと思います」とのこと。ちなみに、宇治では至る所で高級茶葉が栽培されていますが、その新芽は今も手摘みされているそうです。それは「機械摘みだと新芽だけでなく、昨年の芽が混ざったり、葉切れが生じたりしてしまうから」だと言います。こうした細やかな取り組みもまた宇治茶が最高級ブランドたる理由なのかもしれません。

通圓ではそうやって栽培された高級茶葉をブレンドし、オリジナル商品として売り出しています。中でも通円氏が一押しするのは煎茶の「あおい」という銘柄。「旨みの強い4種の茶葉をほど良い後味が残るようにブレンドした自信作です」と言うように、ひとたびそのお茶を口に含むと、普段使いのものとは段違いの旨みや甘みを感じられます。「最近は単一品種(シングルオリジン)の茶葉が好まれる傾向がありますが、お茶屋の腕の見せ所はやはりブレンド。店頭ではお客様と話しながら、好みに応じたものを提案させていただいています」と通円氏。宇治を訪ねる折には、通圓で自分好みのお茶を探してみてはどうでしょうか。

ところで、最近はこうしたお茶の品質や細やかなサービスが評判となり、日本人だけでなく、多くの外国人旅行者が通圓を訪れています。確かな味と技術で宇治茶の魅力を国内外に発信する通圓は、伝統と歴史のまち「宇治」を代表する名店と言えるでしょう。

通圓本店の外観。寛文 12 年 ( 1672 年)に建てられた江戸時 代の町家の遺構を残す建物で、 店内には数百年前に作られた茶 壷や一休和尚にもらったとされ る「初代通円」の木像がある

通圓本店の外観。寛文 12 年 ( 1672 年)に建てられた江戸時 代の町家の遺構を残す建物で、 店内には数百年前に作られた茶 壷や一休和尚にもらったとされ る「初代通円」の木像がある

人気のブレンド銘柄「あおい」。 「旨みの強い高級煎茶は 60 ~ 70 °C程度のお湯で出したほうが 香りと味が引き立つ」とのこと。 また、お茶を淹れた後に急須の 水分をきちんと切っておくと、 2 煎目、 3 煎目もおいしく淹れるこ とができるそうです

人気のブレンド銘柄「あおい」。 「旨みの強い高級煎茶は 60 ~ 70 °C程度のお湯で出したほうが 香りと味が引き立つ」とのこと。 また、お茶を淹れた後に急須の 水分をきちんと切っておくと、 2 煎目、 3 煎目もおいしく淹れるこ とができるそうです

通圓

所在地
京都府宇治市宇治東内1 
TEL
0774-21-2243
URL
http://www.tsuentea.com

▲ ページトップ