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東北会企画②

2019年09月号

「なごやめし」の決め手
八丁味噌を知る

 愛知県の伝統的な調味料である八丁味噌。多くの「なごやめし」に使われるこの味噌は、まさに「なごやめし」の味の決め手といっても過言ではありません。そこで、八丁味噌協同組合を取材し、八丁味噌の歴史や特徴、そしておいしい食べ方や昨今の販路開拓に関する取り組みなどについて伺いました。

八丁味噌の特徴

 日本の伝統的発酵食品である味噌。全国的には大豆に米麹を加えてつくる「米味噌」が最もポピュラーで、九州や四国、中国地方では麦麹を加えてつくった「麦味噌」が多いですが、中京圏では大豆と塩のみを原料とした「豆味噌」が古くから人々の生活に根付いていました。中でも岡崎の八丁味噌は、大豆の旨みを凝縮した濃厚な豆味噌として知られています。その製法は、江戸時代の昔から変わっていません。まず蒸した大豆を味噌玉にし、それを豆麹にして水と食塩で仕込みます。ポイントは、仕込みに木桶を使うこと、そしてその上に丸石を手作業で積み上げて重石とし(味噌6tに対して石3t)、2年間以上もの長きにわたって天然熟成させることです。大手メーカーのほとんどでは巨大なタンクで大量に仕込みを行い、人工的に温度調整を行って数カ月で熟成を進ませますし、木桶を使っているところでも3tもの石を重石にすることはありません。岡崎の八丁味噌が大量の重石を必要とするのは、一般的な味噌よりも水分を少なく仕込んでいるので、原料にかなりの圧をかけねばならないからです。

 他の味噌と違って八丁味噌がまるで粘土のように固いのは、このためです。長いこと仕込み置くため色も濃く、辛口と思われますが、塩味は控えめで濃厚なうま味があります。大豆タンパク質もしっかりアミノ酸に分解されており、消化吸収のよい食品です。また、食品添加物は一切使用しておらず、加熱処理もしていないので〝生きた自然食品〟と言えるでしょう。

カクキューの工場見学

 この製法で八丁味噌をつくっているメーカーは2社のみ。岡崎城から西へ八丁(約870m)のところにかつてあった八丁村(現・岡崎市八帖町)のカクキューの屋号で知られる合資会社八丁味噌とまるや八丁味噌です。

多種多様な味わいが魅力

 手間暇かけた伝統の天然醸造によって生み出された、八丁味噌の深い旨みと濃厚な味わい。その魅力を存分に生かした〝八丁味噌グルメ〟といえば味噌煮込みや田楽などの「なごやめし」がまず挙げられますが、実は多種多様な料理に用いることができるそうです。例えばカクキューの八丁味噌のパウダーをカレーにちょっと加えてみると、それだけで長時間煮込んだようなコクが出ます。バニラアイスに振りかけてもおいしいですし、チーズとの相性もバッチリなのでピザに加えるのもオススメだといいます。

 このように多種多様な楽しみ方ができる八丁味噌ですが、こうした魅力が中京圏以外にはあまり浸透していないのが課題となっています。カクキューとまるや八丁味噌ではそれぞれ随時工場見学を受け入れ、訪れる人に独自の製法や味わいを体感してもらっているそうです。また、カクキューは2017年、八丁味噌の料理や喫茶、やきカレーなどを味わえるフードコート「岡崎カクキュー八丁村」を本社併設でオープン。八丁味噌の魅力発信に努めています。岡崎市に訪問された際は、ぜひ奥深い八丁味噌の世界を味わってみてはいかがでしょうか。

木桶の上に円錐状に石を積む職人たち。地震などでも崩れたことがないという。ここまでしっかりと石を積むには5年から10年の修業が必要

木桶の上に円錐状に石を積む職人たち。地震などでも崩れたことがないという。ここまでしっかりと石を積むには5年から10年の修業が必要

カクキュー本社屋。昭和2年に建てられた洋風デザインの建物で、国の登録有形文化財となっている

カクキュー本社屋。昭和2年に建てられた洋風デザインの建物で、国の登録有形文化財となっている

「岡崎カクキュー八丁村」の人気メニュー 「味噌煮込みうどん」(食事処休右衛門)

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「八丁味噌香る岡崎おうはんエッグカレードリア」(元祖鉄板焼きカレーbyさん太)

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