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事務所 訪問

2019年09月号

永谷文人税理士事務所 写真

顧問先は地元が8割
地域密着と誠意ある対応が評判

顧問先にも職員にも「自分の言葉で誠心誠意接する」ことをモットーとする永谷文人税理士事務所 所長の永谷 文人先生。長年、愛知県安城市で地域密着型の事務所として地元の顧問先とのつながりを大事にし、現在ではさまざまな地域活動のサポートも行っています。

顧問先には自分の言葉で誠心誠意接する

まずは事務所創業の経緯をお聞かせください。

永谷 文人所長(以下、敬称略) 創業者の永谷 博茂は地元農家の4男の生まれで、税務署に勤めた後、1971年に税理士として当事務所を開業しました。当時、安城市にはまだ企業が少なく、税理士開業も市内で3番目と非常に珍しかったようです(現在では市内に約150事務所)。あたり一面農地でしたが、徐々に工業都市へと変貌しつつある時期で、農家の長男がさまざまな業種で起業するケースが多々あったと聞いています。開業したての頃は自転車で市内をまわって新規顧問先開拓を進めたそうです。現在も顧問先の割合としては約8割が市内です。ささいな用事や相談事でも駆けつけるなど、フットワーク軽く地元密着で地場企業の経営者たちと関わってきました。ちなみに、先代は開業して10年ほどは自宅で業務を続け、現在の自社ビルは80年に建てたそうです。

2代目である永谷先生も、先代と同じくもともとは税務署に勤めていたそうですね。

永谷 税務署で働きながら資格を取得し、在職中に先代の創業者の娘と結婚、91年に永谷博茂税理士事務所(当時)に入所しました。

同じ税務業界とはいえ、国税局職員と税理士とでは仕事内容も立場も全く違います。入所後の業務にはすぐに慣れることができましたか。

永谷 当初、周囲には「税理士資格を有した婿養子の跡取り」として気を遣われましたし、仕事を誰にどう教わればよいかも分からず、事務所に入ってからしばらくは苦労しました。
 また、当時担当していた300ほどの法人・個人の顧問先支援にも苦戦しました。特に最初は気負って「全員に平等に接し、全員に好かれよう」と八方美人になって訪問を重ねたために疲れ切ってしまいました。そんな中、ある時ふと「このままでは心も身体も持たない。もっと自分のキャラクターやスタンスを全面に出してもいいではないか」と思い直したことで、気が楽になりました。それ以後は変に取り繕わず、自分の言葉で誠心誠意やりとりすることを常に意識してきました。職員に対しても同様のスタンスでコミュニケーションをとるよう心掛けたところ、徐々に打ち解けることができました。
 例えば、こんなことがありました。顧問先の経営者とその担当者の意見が合わず、トラブルになってしまい、私が担当者の代わりにその会社に行くことに。先代には「20年も続いてきたお得意様だけど、今日でその縁を切ることになるかもしれない」と伝え、先代は「お前に任せる」と言ってくれました。そこで私は、先方にこう伝えたのです。「確かにうちの担当者に落ち度があったかもしれませんが、彼の言い分にも一理あります。彼はうちにとって宝物だから守らねばなりません。だからあなたが彼のことをどうしても気に入らないというのなら、今日ここで顧問契約を解消するしかありません」と。先方は私の話を真剣に聞いてくれて、最後には和解に至りました。現在もその企業とは代替わりを経て良好な関係が続いています。顧問先と担当者との関係が悪化したら、平謝りして担当変えをするのが手っ取り早い解決法なのかもしれませんが、誠意を持って真っすぐに思いをぶつけたのがよかったのだと思います。

職員の方たちにとっても、そうしたスタンスで言い分をしっかり聞いてくれる上長がいるのはありがたいことだと思います。事務所としてのコンセプトを教えていただけますか。

永谷 まず何より顧問先第一、これは職員全員に肝に銘じてもらっています。そして2番目に所員たち一人ひとりの幸せや生活を守ること、3番目に事務所の発展、4番目に社会貢献を大切にしています。社会貢献については、先代も私もロータリークラブに入り、地域のためにさまざまな活動に携わりながら人的ネットワークを広げてきました。

顧問先の8割が地元とのことでしたが、最近の相談内容や課題の傾向はどうなっていますか。

永谷 ここ7~8年、かつて当事務所が創業した頃に農地を宅地に変え、賃貸アパートなどの経営を始めた創業者の方が亡くなって、そのご家族が相続関係の案件を相談しに来るケースが多くなっています。こうした状況にあって、資産税の贈与や相続については日頃から知見を深めるよう心がけています。例えば私はここ5年ほど、気の合う税理士に呼びかけて勉強会を実施してきました。税務署時代のネットワークを生かして外部講師を呼んで講義してもらった上で、議論する会です。先日は国税不服審判所のOBを招きました。
 その他にも、当事務所では法人設立支援や会計ソフト導入支援、税務調査の対応などにも注力しています。

写真1

所長室に飾られた永谷先生作の絵手紙。7~8年前に趣味で始めて以降上達され、現在では個展を計画されるほどに。旅先の景観や風物が愛らしく描かれ、旅情が伝わってきます

写真2

若手の職員が活躍する事務所です

次世代に知見を引き継ぐための教育

職員教育については、どのようなことに取り組んでいますか。

永谷 先ほど申し上げた顧問先との接し方などについて、明確に言葉にして職員に伝えるようなことはしていません。そうしたことは私自身の日頃の行動を見て、みんな理解してくれていると信じています。ただ、知識やノウハウ面に関してはそうはいきません。ベテラン層が下の世代に相続関係などの知見をいかにして伝えるかが課題になっています。

事務所を見せていただきましたが、若手が多く活気のある印象を受けました。

永谷 現在、職員は一番の年長者が68歳で最年少が19歳、60歳以上が3人で50代がおらず、40代が1人、30代以下が7人とかなり幅広い年齢構成になっており、特に若者がたくさんいます。さらに現在30歳の息子も資格取得に向けて勉強中で、いずれ税理士として事務所に加わってくれることと思います。このように次代を担っていく人材が多いのはもちろんよいことなのですが、現在のところ教育が後手にまわっているのが実情です。なので、最近はなるべく有料研修などに積極的に行かせて、研修後は朝礼などの際に学んだ内容をしっかり報告・共有する機会もつくるようにしています。ただ、机上で学んだ税法の知識や事例などをすぐに実地で生かせるわけではありません。例えば、顧問先企業の創業者が次期経営者に株を譲渡するにあたっては、日頃から親身に両者に接していることが有益なアドバイスをする大前提ですし、それぞれの思いや事情を全て把握した上で、どういったタイミングでどのように話を進めるべきかを慎重に決める必要があります。経験を重ねることでしか、得られないものがあるのです。

地域活動やまちおこしを税理士の立場から支える

顧問先と「誠心誠意」向き合うことをモットーにしている永谷 文人先生

顧問先と「誠心誠意」向き合うことをモットーにしている永谷 文人先生

地元、安城市を盛り上げるための活動にも取り組んでいると聞きました。どんなことをしていらっしゃるのですか。

永谷 安城市は名古屋の衛星都市で、ベッドタウンとして新興住宅が増えており、人口は毎年5%平均で伸びています。が、残念ながら地元で買い物をする人は年々減少しており、商店街に今ひとつ元気がありません。私はその活性化に何らかの形で貢献したいと、以前から考えていました。そんな折、商店街を中心としたまちづくり事業を手掛ける(株)安城スタイルという企業から相談があり、現在そこの顧問を務めている他、商工会議所の幹事や会計監査も担当しています。また、名古屋市で広告会社を経営している友人がいるのですが、彼が安城市のことをいたく気に入ってこの近所にもオフィスを借りて、商店街のPRなどの活動を展開しています。彼にも税理士の立場と目線でさまざまなアドバイスをしています。

最後に、事務所の将来像をお聞かせください。

永谷 職員一人ひとりにプロフェッショナルになってもらいたい、というのが私の願いです。先ほど人材教育・育成が道半ばであることは申しましたが、例えば小規模事業者や個人の税務の入力事務などの作業を今以上に効率化して、その分、空いた時間を各自のスキルアップに充てられるような体制を築きたいと考えています。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。

税理士までのあゆみ

永谷先生は1975年に愛知大学法経学部を卒業後、名古屋中村税務署に勤めながら税理士の資格を取得されました。その後は名古屋国税局資料調査課で主に法人税の調査事務に従事。在職中に先代である永谷 博茂先生の娘さんとご結婚、91年に同局を退職し、永谷博茂税理士事務所(当時)に入所されました。

永谷文人税理士事務所

所在地
愛知県安城市御幸本町3-23
TEL
0566-75-2251
設立
1971年(永谷博茂税理士事務所として)
職員数
12名
URL
http://www.nagaya-zeirishi.com

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