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北海道の元気企業

2018年05月号

函館で圧倒的な人気を誇る
ハンバーガーチェーン

館市を中心に17店舗を展開する「ラッキーピエロ」は、「ラッピ」の愛称で地元民に親しまれている人気のハンバンガーチェーンです。人口約26万人の函館にあって、年間の延べ来店客数は9倍近い220万人。1987年、函館市のベイエリアに第一号店を出店して以来、地域とともに成長してきた「ラッピ」の魅力を紹介します。

店舗ごとに異なる内装でお客様のハートをわしづかみ

ラッキーピエロの店内に一歩足を踏み入れた瞬間、まず目を奪われるのがそのユニークな内装です。「五稜郭公園前店」は、鮮やかな色づかいの天使の絵で壁一面が埋め尽くされ、天井からは金色のエンジェルのオブジェが吊り下げられています。デザインのコンセプトは「おしゃべりな天使たち」。大小さまざまな天使を眺めながらテーブル席に着くと、次第に気分が落ち着いてくるのが不思議です。

実は、こうしたコンセプトは店舗ごとに決められており、ひとつとして同じものはありません。ある店舗ではエルヴィス・プレスリーの写真が至るところに飾られ、また別の店舗ではボッティチェリの絵画が壁に大きく描かれています。さらに、一年中サンタクロースの人形やクリスマスツリーがディスプレイされた店舗や、大きなメリーゴーラウンドを設置した店舗までも。どうして、ここまで内装に力を入れているのでしょうか。その理由について、ラッキーピエログループの王 一郎社長は「おいしいだけでは、お客様は人に伝えてくれません。でも、記憶に残る体験をすれば、『メリーゴーラウンドに乗ったよ!』などと情報発信をする、口コミの宣伝マンになってくれるのです」と説明します。

そしてもうひとつ、ビックリするのが商品のボリュームです。例えば、年間30万食が売れるという看板メニューの「チャイニーズチキンバーガー」は、高さ14㎝、直径11㎝、一般的なハンバーガーの2倍のサイズがありながら、350円(税別)とかなり割安。創業当初からの提供メニューであり、そもそも全国チェーン店との差別化を図るために、他店がまだ力を入れていなかったチキンバーガーに着目し、倍の量での提供を決めたそうです。もちろん、地産地消の素材にこだわって作られているため、味は絶品。実際、「ラッキーピエロがもっとも大切にしている経営理念は、『地域とともに生きていく』ということです」と王社長。現在、使用している食材の85%が北海道産で、さらに「地産地消を進めることは地元への経済メリットだけでなく、生産者の顔が見える安心感、短い輸送距離による環境面のメリット、そして生産者との絆づくり、地域づくりにもつながっていきます」と話します。

「パレートの法則」に基づいて売り上げ上位20%の商品を磨く

創業当初は8種類のハンバーガーのみだったラッキーピエロですが、30年が経った現在では種類も大幅に増え、カレーライス、オムライス、ピザといったさまざまな料理も提供しており、総メニュー数は100種類を超えます。王社長によれば「これが函館のファーストフードの中で弊社が大きなシェアを獲得できている要因だと思います。地方都市で多店舗展開する場合は『専門店化』ではなく、『総合店化』していかざるを得ません。それと同時に、やみくもに商品数を増やすのではなく、売り上げ上位20%のメニューを磨き上げていくことがカギになります」とのこと。これは「組織全体の大部分の利益は、優秀な20%の人によってもたらされている」という、経済学で有名な「パレートの法則」に基づいた考え方であるとのこと。同社にこの法則を当てはめて考えてみると、売上げの上位20%の商品を集中して磨き上げることが、全体の売上げをアップさせるための効率的な商品開発となっているのです。

お客様一人の生涯価値を192万円と算出

また、同社が創業以来、着実な成長を続けている背景には、3つのユニークな取り組みがあります。ひとつ目は「生涯価値に着目した経営戦略」。生涯価値とは「一人のお客様が特定の商品やサービスに対して一生の間に支出する金額のこと」です。同社では、お客様の生涯価値を192万円と算出し(年4万8000円×40年間)、アルバイトをはじめとする全スタッフでこの金額を共有しています。つまり、1回の購入金額はそれほど大きくなくとも、一人のお客様を失うことは会社にとって莫大な利益の損失だとスタッフ全員が理解することで、接客の質が向上するというわけです。

ふたつ目は「客離れゼロ作戦」。クレームやトラブルが発生した際、迅速に対応できるように、謝罪にかけるコストを3000円まで自由に使える権限を現場に与えているそうです。「宣伝営業をして新規顧客に来ていただくには、その5倍のコストがかかります。何より3000円のお詫びで、生涯価値192万円も望めるお客様をつなぎとめることができるのなら、それに越したことはありません」と王社長は話します。ちなみに、クレーム対応では、通り一遍の謝罪が火に油を注いでしまう恐れがあるため、お客様の怒りの度合いを4段階に分け、それぞれの段階に合わせた謝り方をマニュアル化して対応しているそうです。

そして最後は「団員制度による顧客維持」。ロイヤルカスタマー(優良顧客)創出のために、4つのカテゴリーに分けた会員制度を実施しています。お客様は買い物をするたびにポイントが加算され、「準団員→正団員→スター団員→スーパースター団員」と格上げされていくという仕組みです。累計利用額14万4000円のスーパースター団員になると、商品がすべて6%割引になるほか、社内イベントへの招待もあり、「ほとんど身内のような扱いを受ける」そうです。高いハードルにもかかわらず、毎年200名ほどが誕生しています。

このように、地元のファンを獲得するためにさまざまな取り組みをしてきた同社ですが、現在特に力を入れているのは観光客をターゲットとしたお土産品の開発と販売です。ガラナ飲料、ラーメン、カレーなどのオリジナル食品のほか、マグカップやTシャツなど、多数のアイテムを展開しており、店舗のみならず、ホームページからも購入することができます。13種類あるマグカップは特に人気が高く、それぞれ年間2000個も売れるそうです。「お土産販売を通じて函館の魅力を多くの方に伝えたいですね。売上げは、今はまだ全体の数%に過ぎませんが、店舗の売り場面積の拡張などをしながら、近いうちに15~20%程度まで増やします」と意気込む王社長。もはや単なる飲食店の枠組みを超えて、函館を代表する「観光地」といってもよさそうな元気企業です。

大きな中華風の唐揚げが3個サンドされた「チャイニーズチキンバーガー」。愛称は「チャイチキ」

大きな中華風の唐揚げが3個サンドされた「チャイニーズチキンバーガー」。愛称は「チャイチキ」

函館の定番観光スポット「五稜郭公園」から徒歩1分のところにある「五稜郭公園前店」

函館の定番観光スポット「五稜郭公園」から徒歩1分のところにある「五稜郭公園前店」

店内の壁一面に天使の絵が。もともと王社長は、天使のグッズや本を集める「天使マニア」なのだそうだ

店内の壁一面に天使の絵が。もともと王社長は、天使のグッズや本を集める「天使マニア」なのだそうだ

エコバッグ、マグカップ、ラーメン、ポテトチップス、カレーなど、さまざまなお土産商品を展開

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ラッキーピエログループ

所在地
北海道函館市昭和2-35-12
URL
http://luckypierrot.jp

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