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事務所 訪問

2022年05月号

牧野晃久税理士事務所 写真

顧問先に寄り添いながらIT化を推進
次世代の地域密着型サービスを目指す

岡山県北部の真庭市にある牧野晃久税理士事務所。2017年に父上の後を継いだ牧野 晃久所長は、 アナログとデジタルの両輪を重視しながら、地域密着型の顧問先支援を展開しています。 果たして、牧野先生はどのような思いで事務所を承継し、業務を推進しているのでしょうか。事務所を訪問し、そのお仕事ぶりを拝見しました。

父上が培った信頼が礎承継を機に事務所を飛躍的に刷新

牧野先生は税理士資格を取得した後、広島市の会計事務所での勤務を経て、2000年から父上の事務所で働き始めたそうですね。

牧野 晃久所長(以下、敬称略) 広島市で勤務させていただいていた会計事務所は積極的にITも導入しており、自計化も進めていたため、業務も効率的に行うことができていました。しかし、いざ父の事務所で働いてみると、当時はまだITなどに対する意識が低く、自計化もほとんど進んでいなかったため、当初はギャップに戸惑ってしまいました。広島の会計事務所では現物の帳票を使ってデータを起こすことはまれでしたが、こちらではそれが常態化している顧問先もあるほどで、顧問料の水準も広島の事務所より低い状況でした。もちろん、それは地域のニーズに応えた結果だったのですが、当時はギャップを感じずにはいられませんでしたね。

父上と衝突することもあったのでしょうか。

牧野 父とは仕事の仕方や設備投資の方向性などについて、たびたび議論しました。父は17年に他界しましたが、今思えば、私の主張だけでも、父の主張だけでも足らず、その2つを足して2で割るくらいがちょうど良い感じだったように思いますし、結果的に現在はそのようなスタイルに落ち着いているように思います。

父上はどのような方だったのでしょうか。

牧野 とにかく真面目で、周囲の人たちからの信頼も厚かったように思います。だからこそ、人口4万4000人程度の小規模な自治体であっても、事務所をそれなりの規模にすることができたのだと思います。

代替わりはどのように行われたのでしょうか。

牧野 父の引き際をつくるのが自分の仕事だと思っていましたが、道半ばで父は他界してしまいました。その後、葬儀を執り行ったのですが、喪主としての挨拶が顧問先の皆さんに対する世代交代のお知らせになりましたし、多くの顧問先や関係先の皆さんからは温かい励ましのお言葉を頂戴しました。意図したわけではありませんが、振り返ってみると父の葬儀が代替わりをスムーズに進める機会になっており、最後まで父にお膳立てしてもらったような気がしました。

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白を基調に鮮やかな緑をアクセントに使用したオフィスです

そうして17年に会計事務所の名義を現在のものにしたわけですね。

牧野 そうです。また、それを機に思い切ってリフォームにも着手し、18年に竣工しました。税理士業務はサービス業ですから、内観にこだわったほうが顧問先にとっても、職員にとっても良いし、顧問先の新規開拓や採用に関してもプラスに働くと思ったのです。

どのような点にこだわりましたか。

牧野 真庭市の主産業は林業なので、随所に木材を使用したり、緑色を入れたりすることで、明るく、温かみのある雰囲気づくりを目指しました。その読みは的中し、顧問先も職員も「居心地が良くなった」と言ってくれています。 顧問先の事情を重んじきめ細かいサービスを推進

真庭市の特徴について伺いたいと思います。

牧野 先ほど申し上げた通り、真庭市では林業が盛んで、市内には規模の大小を問わず、製材所をはじめとした林業関係の事業者が数多く存在します。また、近年では木質バイオマス発電を展開するなど、SDGsの観点からも注目を集めています。

顧問先の業種などはどうなっていますか。

牧野 林業関係はもちろん、製造業やサービス業など、さまざまな業種の顧問先を抱えています。また、小さい自治体ですから仕事上は顧問先であっても、実際はご近所さんだったり、顔見知りだったりすることもしばしばあります。物理的・心理的な距離感が近いことでいろいろと察することができるのは非常に良いのですが、その反面、変に慣れ合ってしまわないように注意しなければなりません。税理士という職務の特性上、何より厳格さや正確さを重んじなければなりませんから。当事務所は父の代から決算書などの正確性には自信があり、顧問先へ税務調査が入る回数が少ないと感じています。結果、顧問先の皆さんにも安心して業務に取り組んでもらえていると思います。

代替わりによって、業務の進め方も大きく変わったのでしょうか。

牧野 父の代の頃から少しずつ折り合いをつけて、ITを導入したり、自計化を推進したりしてきたおかげで、以前に比べてかなり効率的に業務を行えるようになりました。ただ、それでも昔ながらのアナログな手法を好む顧問先もいるので、そういったニーズにもしっかりと寄り添いながらサポートしています。若い頃はそれを非効率だと感じることもありましたが、長年、地域密着をモットーに顧問先と向き合っているうちに、顧問先ごとにさまざまな事情があることも分かってきたので、今ではできる限り柔軟に対応するようにしています。

IT化を推進する際には顧問先の協力も欠かせないと思いますが、そのあたりはどうされていますか。

牧野 折に触れて提案するようにしていますが、後継者は積極的にITを活用したいと思っていても、現社長がITを敬遠しているケースも多いので、特に世代交代のタイミングなどをチャンスと捉えています。私たち自身が同じような経験をしてきたので、導入に関する課題、ソフトやシステムを入れる際の苦労なども含めて提案できていると自負しています。

職員教育について心がけていることはありますか。

牧野 事務所の都合ではなく、まずは顧問先の事情を考えてほしいと伝えています。また、顧問先からの相談に対しては、一つの回答だけでなく、必ず複数の回答を提案し、それぞれのメリット、デメリットを説明した上で選択してもらうように指導しています。 アナログとデジタルの両輪で 人口減少時代を乗り切る

その他、顧問先からはどのような相談が寄せられていますか。

牧野 税務会計よりも、売上アップや人材確保など、経営に関する相談が多いように思います。また、事業承継の相談を受けることも増えていますが、その際には実体験に基づいたアドバイスをさせていただいています。

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生まれ育った地元・真庭とともに歩む牧野 晃久先生

最近は採用に苦心している会計事務所も多いようですが、そのあたりはどうでしょうか。

牧野 正直、地域の人口減が著しく、若者の採用はますます厳しくなっています。しかし、ありがたいことに当事務所は離職率が低く、職員の半数くらいが20~30年ほど勤務し続けてくれています。こうしたベテラン職員たちの力を最大限に活かしながら、引き続き若手の採用にも力を注いでいきたいと思います。

今後の展望についてお聞かせください。

牧野 AIや会計業務の自動化を図るRPA(Robotic Process Automation:ロボティック・プロセス・オートメーション)の台頭で、会計事務所の業務がなくなるのではないかと危惧する声もありますが、少なくとも地方都市においてはアナログな人間関係や対応が重んじられる傾向があり、これからも会計事務所は重要な役割を果たすことができると思います。ただ、一方で時代にマッチした技術を取り入れていかないと、現在、求められている働き方改革の実現やその他のサービスの拡充が難しくなってしまいます。だからこそ、当面はデジタルとアナログを両輪と捉え、それぞれを充実したものにしていきたいと考えています。具体的には、見えない部分はRPAの導入や新しいソフトの導入でさらに業務の効率化・自動化を推進しながら、見える部分については今まで通り、アナログな対応を重視し続けたいと思います。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。

税理士までのあゆみ

税理士を目指した経緯について「父の影響が大きかった」と話す牧野先生。「私が長男だったこともあり、父は私を税理士にするつもりで子育てをしていたように思います。県北の真庭市から県南の進学校に通うことになったのも、父のそういう思いによるところが大きかったように思います」と。 ただ、本格的に税理士になることを意識し始めたのは大学に進学してからだったそうです。「周囲の友人たちが進路を決める中で、自分も何か方向性を定める必要があると思い、あらためて税理士になり、父の会計事務所を承継することを意識するようになりました」と牧野先生。大学3年生の頃から専門学校に通い始め、少しでも早く資格を取得できるようにと大学院に進学。最終的にダブルマスター(大学院の修士課程を2つ修了)による税理士試験の科目免除制度を活用して税理士資格を取得。その後、広島市の会計事務所で2年ほど修業を積んだ後に地元に帰り、2000年、29歳の時に税理士登録をしたそうです。

牧野晃久税理士事務所

所在地
岡山県真庭市久世2635
TEL
0867-42-0021
設立
1966年(現在の名義に変更したのは2017年)
職員数
6名
URL
https://www.kaikei-home.com/makinokaikei/

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