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事務所 訪問

2020年03月号

松田哲也税理士事務所 写真

地域貢献活動や働き方改革など
独自の取り組みで躍進

地域にしっかりと根を張り、持続的に顧問先と社員を支えていくための取り組みに尽力している松田哲也税理士事務所。今年1月6日には新築のオフィスに拠点を移し、さらなる発展を目指しています。所長の松田 哲也先生にこれまでの歩みと展望をお聞きしました。

明確な理念の下での成長と立ちはだかったさまざまな壁

開業された経緯をお聞かせください。

松田 哲也所長(以下、敬称略) 私は26年にわたって高松国税局職員として働いた後、2008年に税理士として開業しようと退官しました。その際、長年お世話になった金融機関の先輩から「地元に事務所を構えて、無償で地域社会や住民に尽くす〝赤ひげ〟のような税理士であれ」とアドバイスを受けたこともあって、開業の地を地元の高松市川島東町に選びました。

開業当初、どのようなコンセプトを掲げましたか。

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1階と執務室のある2階は吹き抜けでつな
がっています

松田 国税局時代に出会った優秀な経営者の方々はみな経営理念をつくっていたので、私も独立にあたって「信頼と誇り、源泉は人」という経営理念を掲げました。これは顧問先との信頼関係の下、永続的な成長と企業価値の創出・向上をお手伝いする税理士としての仕事に誇りを持つこと、そしてその仕事の源泉である人、つまり私自身や社員一人ひとりが全力で取り組むことを意味するものです。

開業後の滑り出しはどうでしたか。

松田 当初から香川県中小企業家同友会(都道府県ごとに全国47の中小企業経営者が多数参加する協議体)に加わり、地域の経営者たちと経営について真剣に学び合うことで一気に顧問先数が伸びました。が、3年目頃からそれが横ばいに。理念を重んじて「こういう事務所にしたい」とこだわった結果、自分のやり方に是が非でもついてこさせるようなやり方で社員に接していたことが原因の一つです。当然、社員のモチベーションは上がらず、生産性と顧客満足度が伸び悩み、新規顧問先を開拓する機会も減ってしまったのです。そんな折、ある顧問先経営者の奥さんのひと言が転機になりました。「あなたの話し方は税務署職員そのもので、経営を支えてくれるパートナーとは思えない」と言われてしまったのです。確かに私は国税局時代の経験を土台として、企業経営において透明性がいかに大事であるかを身をもって知っていたので、顧問先の事業の永続的な発展を願ってあえて厳しく接したり、事細かな確認やアドバイスを行ったりすることもありました。その自分がよかれと思ってやっていたことが相手には伝わらず、逆にうるさく感じられてしまっていた。この事実はショックでした。以後、私は事務所経営を立て直すためにまずは自己変革が必要だと思うようになったのです。

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2階執務室も広々としたつくり

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新オフィス1階のコミュニティスペース。明るくて開放感たっぷり。ちなみに新オフィスのレイアウトは社員からのアイデアをたくさん反映したもの

地域貢献活動を通じて社員が生き生きと働く職場に

どのように事態を打開していったのでしょうか。

松田 きっかけは、中小企業家同友会の集まりに来てくれた大里綜合管理(株)(千葉県大網白里市)の野老 真理子社長の講演を聞いたことです。同社は不動産管理業を本業としながら、熱心な地域貢献活動のおかげで地域住民から愛され、高い信頼を得ていることで有名な企業です。後日、夫婦で現地に視察に行ったところ、まさに驚きの連続でした。例えば社内の大会議室に朝から地域のお年寄りがたくさん集まり、無料で整体の施術を受けていました。昼は同じ部屋が食堂になり、地域の主婦が来てワンコインランチを提供したり、ミニコンサートを行ったりといった具合にです。こうした取り組みを目の当たりにして、私はあらためて開業前の先輩の言葉「無償で地域社会や住民に尽くす〝赤ひげ〟のような税理士であれ」を思い出しました。

それを機に、さまざまな地域活動を行うようになったのですね。

松田 そうです。私たち税理士の仕事は顧問先企業や地域あってのものですが、全国で過疎・高齢化で地域から活気が失われてしまっています。それを再興するために私たち自身にできることをしようと思ったほか、地域での活動を通じて社員のモチベーションアップや教育につながると思ったのです。具体的には、まず月1回、事務所の全員で地域の清掃活動を行うようにしました。また、事務所所有の土地を花畑につくり変え、夏はひまわり、秋はコスモスを地域住民の方たちに楽しんでもらえるようにしました。こうした活動を続けるうち、事務所の雰囲気はどんどん変わっていきました。社員たちが生き生きと働くようになったのです。本業のかたわら地域貢献活動をすることは、いまや当たり前になっています。そして住民の方たちとのやり取りのなかでスムーズな会話や話題づくり、自然な気配りを身につけることができ、ひいてはそれが顧問先とのコミュニケーションにも生かされています。

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本業のかたわら、社員らが手掛けている花畑。オフシーズンには種を地域の福祉施設の作業所に持っていって入所者の方たちに袋詰めにしてもらい、それを保育所や顧問先に配るという取り組みも

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新オフィスではほかにも、子ども連れでも仕事ができる作業用個室を設けるなど、社員たち一人ひとりが末永く働き続けられるようなさまざまな工夫が凝らされています

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階吹き抜けのそばには自由に作業ができるフリースペースも

今年1月6日に移られた新築のオフィスも、さまざまな地域活動の舞台となっているそうですね。

松田 事務所入口を入ってすぐの広々としたコミュニティスペースを、地域住民の方たちに使ってもらおうと考えています。先頃、実際に地元のお母さんたちとそのお子さんたちを招待してお茶会を開いたところ、とてもにぎやかになりました。地域からのニーズを受けて、今後も同様の催しを継続していきたいと考えています。

地域活動や新オフィスの準備と同時並行で、社員の方たちの働き方改革も手掛けたと伺いました。

松田 特定の社員に仕事が集中したり、集中力を欠いてミスが重なったりという事態を減らそうと、MJSの「ACELINK NX-Pro業務日報」を活用して社員全員に満遍なく業務を振り分けるようにしたほか、顧問先一社ごとに主担当と副担当を付ける体制を徹底し、社員同士で連携、情報共有が促進されるような業務改革を行いました。

本業のかたわら、地域貢献活動に尽力してきた松田 哲也先生

本業のかたわら、地域貢献活動に尽力してきた松田 哲也先生

事務所と顧問先の双方の成長を目指して

次のステップとしてはどんなことをお考えですか。

松田 毎年、顧問先に向けて経営指針発表会を実施しているのですが、その際に提示する指針書には当事務所の10年後の労働環境や働き方、給与賃金のビジョンも記載しています。これは当事務所がしっかりと地域に根づき、社員や顧問先を末永く支えていくことを示すためです。おかげさまで顧問先数は順調に伸びていますので、数年以内に税理士をもう1名、雇い入れて法人化を見据えた組織体制の整備を図っていきます。

 また、今後はこの新オフィスを会場としてセミナーを積極的に実施していきたいですね。開業から10数年、私自身が一経営者として理念を基盤にいかに企業価値を創出し、それを育てていくかを身をもって学んできました。その中で培った経営哲学について話したり、意見をもらったりする場を設けることで、私どもと顧問先双方の成長につなげていきたいと思います。

本日はありがとうございました。ますますのご発展をお祈りいたします。

税理士までのあゆみ

 松田先生はもともと飛行機乗りになりたいと考えていたそうですが、早い段階で視力を落としてしまい、その夢は断念せざるを得なかったといいます。代わりに脳裏に浮かんだのが「かつて父から勧められた税にまつわる仕事」。高松国税局に就職が決まり、およそ26年間にわたってその職員として働きました。2008年7月に退職、その約1カ月後には独立開業を果たしたそうです。また、2012年には社員が増えてきたこともあって、会計業務を別会社化、会計法人(株)フライトプランも設立されました。

松田哲也税理士事務所

所在地
香川県高松市川島東町936-9
TEL
087-887-3188
設立
2008年
職員数
7名
URL
http://www.matsuda-taoffice.com

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