顧問先紹介
2021年02月号
(株)ミツウロコ食品
いわき常磐エリアを代表する練り物メーカー、(株)ミツウロコ食品。時代の変化とともに業界全体が苦境に陥る中、同社の商品は依然として根強いファンに支えられています。菅原税務会計事務所の菅原 一禎所長が同社の根本 嘉夫社長に、その背景や秘訣についてインタビューしました。
独自製法と徹底した衛生管理体制
菅原 一禎所長(以下、敬称略) 御社と私どもの事務所とは、お互いの先代の時代から数えてもう60年以上の付き合いになります。この機会に、あらためて御社の歩みをお聞かせください。
根本 嘉夫社長(以下、敬称略) 当社の工場は、現在では内陸のJR常磐線大津港駅の近くに立地していますが、元をたどれば戦後間もない1948年(昭和23年)、シベリア抑留から戻ってきたばかりの父が港のある平潟町で商売を始めたのが原点です。地元のカマボコ職人とともに自宅の土間でチクワ屋を始め、その後サツマ揚げも作るようになったと聞いています。そして数年後には、そうした個人事業主が複数寄り集まり、原料(平潟港で揚がる雑魚)の共同購入のための組合を立ち上げたそうです。同様の動きが近隣でも多数起こり、徐々にいわき常磐エリアの練り物産業が発展していったのです。
その後、時代の変化とともに、練り物の原料には主にアメリカ産スケソウダラの冷凍すり身が使われるようになっていきました。アメリカ沖の船上で加工されたものを商社・水産会社が問屋に売り込み、それを当社のような練り物メーカーが商品化する、という流れになっています。
菅原 昭和50年代中頃までは、福島県いわき市から北茨城市にかけて約50軒も練り物メーカーが点在していたそうですね。
根本 まさにその頃がピークでした。人口減やギフト需要減、食の欧米化などの影響でこの業界はどんどん衰退し、現在では北茨城市内に練り物メーカーは当社を入れて3社ほどしか残っていません。
菅原 そんな中、御社では81年、起死回生の商品を打ち出して苦境を乗り切りました。現在も看板商品となっている「カステラ」の魅力をお聞かせください。
根本 同じ原料や調味料でも、製法や管理方法によって味わいや食感が全く変わってくるのが練り物の難しいところです。原料を練り上げてすぐに機械で成型し、揚げるのが普通ですが、当社の「カステラ」は独自の「手造り低温坐り製法」で作っていることが最大のポイントです。手作りで練ったタネを冷蔵庫で一晩熟成させてから、手作業で一枚一枚揚げることで、やわらかでありながらしなやかな弾力を備えた逸品に仕上げているのです。
菅原 10~11年後に生まれたもう一つのヒット商品「天宝」とともに、「カステラ」は今や地元北関東や首都圏を中心として全国のスーパーチェーンに展開しています。魅力的な商品作りだけでなく、徹底した衛生管理体制も取引先からの評価を高めているのだと思うのですが、そのあたりいかがでしょうか。
根本 おかげさまで、2017年に「食品衛生優良施設」として厚生労働大臣賞を受賞することができました。これは現在の工場が稼働して約30年間、衛生管理に取り組み、工場内の衛生環境を維持し続けたからこそ得られた栄誉であり、お客様の信頼感にもつながるものと実感しています。
次世代を見据えた取り組み
菅原 まさに継続は力ですね。最後に、これからの御社を支えていく人材についてお聞かせください。新規採用などはうまくいっていますか。
根本 現在、従業員数は約45人、平均年齢は40歳ほどで、若手も積極的に採用しています。また、未来の地元雇用促進やファンづくりも見据え、地元小学生たちの社会科見学も毎年受け入れています。「地元にこんなにおいしいものをつくる工場がある」と知ってもらうだけでも意義があるので、地道に続けています。
菅原 次代を担うご子息も、既に入社されていますね。
根本 彼は専門学校で経理を学び、調理学校に通った上で入社したので頼もしい存在です。これからはますます個性的な魅力を備えた商品で勝負する時代になっていくと思います。ぜひ新たな商品開発などにもチャレンジしてほしいです。
菅原 ぜひこれからも、末永く地域が誇る企業であり続けてください。
菅原税務会計事務所
- 所長
- 菅原 一禎
- 所在地
- 茨城県日立市東成沢町1-6-8
- TEL
- 0294-22-8335
株式会社ミツウロコ食品
- 代表者
- 鑓田 実
- 設立
- 1948年
- 事業内容
- 水産食品加工・販売
- 所在地
- 茨城県北茨城市関本町関本中2677
- TEL
- 0293-46-0456